Tag: 経済学・経済政策 貨幣市場とISLM分析

情報

貨幣市場

  1. 貨幣
    • 金融資産のうち、流動性が高く安全資産であるもの(現金、預金)
    1. 交換手段
      • 財の交換媒介物としての役割
    2. 価値貯蔵の手段
      • 安全資産としてリスクを負わずに富の将来への貯蔵をする役割
    3. 価値尺度
      • 全てのモノを共通の尺度で表示し、価値の比較を容易にする役割
  2. マネーサプライ
    • 市場に流通している貨幣の供給量
  3. マネーストック
    • 通貨保有主体が保有する通貨量の残高
  4. 通貨保有主体
    • 居住者のうち、一般法人、個人、地方公共団体・地方公営企を含む
    • ただし、預金取扱機関、保険会社、政府関係金融機関、証券会社、短資等を除く
  5. マネーストック統計
    • 2008年より公開(旧マネーサプライ統計)
    1. M1
      • = 現金 + 預金通貨
    2. M2
      • = M1 + 準通貨(定期預金等) + CD(譲渡性預金、発行者は国内銀行等)
    3. M3
      • = M1 + 準通貨(定期預金等) + CD(譲渡性預金、発行者は全預金取扱機関)
    4. 広義流動性
      • = M3 + 金銭の信託 + 投資信託 + 金融債 + 銀行発行普通社債 + 金融機関発行CP + 国債・FB + 外債
  6. 債券
    • 貨幣以外の金融資産のこと(危険資産)
    • すぐに取引に使うことができない金融資産(国債や社債等)
  7. 危険資産
    • 物価変動を考慮しない場合に、保有をしている間に価値が変動するもの
  8. 貨幣市場と債券市場は表裏一体の関係
    • 貨幣市場で超過需要が発生している時、債券市場では必ず超過供給が発生している
  9. ワルラス法則
    • すべての市場の超過需要額の和はゼロとなる性質のこと
  10. ケインズの流動性選好説
    • 利子を生まない貨幣を他の金融資産よりも選好して保有するのは、貨幣のもつ流動性によるものとする考え方
  11. 流動性選好(貨幣選好)
    • 安全資産である貨幣を手元に保有しようとする選好のこと

貨幣需要

  1. 需要
    1. 取引需要
      • 取引に利用すること
      • 国民所得の増加関数
    2. 資産需要
      • 資産の蓄積に使用すること
      • 利子率の減少関数
  2. 流動性の罠
    • 債券の利子率が低い場合、債券よりも貨幣を持つ人が増える為、貨幣需要は大きくなる
    • 利子率がゼロに近い場合、債券の魅力が無くなり債券を買う人がいなくなること(貨幣の需要は無限大)
    • 利子率はそれ以上に低下せず(出来ない)、貨幣需要が無限大となる為、貨幣の供給超過が解消される
    • 参考:流動性の罠 | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
  3. ケインズ型貨幣需要関数
    • 貨幣の需要は、利子率の減少関数
      • 流動性の罠が発生している場合は、水平方向の直線(貨幣需要は無限大)
    • 利子率は、貨幣の値段と考える
    • 貨幣需要は、国民所得利子率によって決まる
  4. 貨幣需要曲線
    • 縦軸:利子率、 横軸:貨幣需要
    • 国民所得が増加する → (貨幣を手元に持ちたいという希望) → 貨幣需要が増加 → 取引需要が増加する(曲線は右方向にシフト)
    • 利子率が上昇する → 資産需要が減少 → 貨幣需要が減少する(曲線は右下がり)
  5. 貨幣を需要する動機
    1. 取引動機に基づく貨幣需要
      • 取引を行うために必要とする貨幣需要
    2. 予備的動機に基づく貨幣需要
      • 不意の支出に備えて貨幣を保有する貨幣需要
    3. 投機的動機に基づく貨幣需要
      • 資産運用の対象として貨幣を保有する貨幣需要
  6. 貨幣の取引需要
    1. 取引動機に基づく貨幣需要
    2. 予備的動機に基づく貨幣需要
  7. 貨幣の資産需要
    • 投機的動機に基づく貨幣需要のこと

貨幣供給

  1. 中央銀行のコントロール対象
    1. 発行する現金通貨
    2. 民間銀行が預ける準備預金
  2. 法定準備預金
    • 民間銀行が、預金の一定割合を中央銀行に預けること(義務)
  3. 法定準備率
    • 準備預金の割合
    • = 準備預金R / 預金D
  4. 法定準備率操作
    • 中央銀行が法定準備率を変えて、貨幣乗数を変化させることにより貨幣供給を調整すること
    1. 法定準備率の上昇 → 貨幣乗数の低下 → 貨幣供給の減少
    2. 法定準備率の低下 → 貨幣乗数の上昇 → 貨幣供給の増加
  5. ハイパワードマネーH(マネタリーベース、ベースマネー)
    • 中央銀行が直接コントロールできる通貨と準備預金のこと
    • = 現金C + 準備預金R
    • = 日本銀行券発行高 + 貨幣流通高 + 日本銀行当座預金
    • 例:ドル買い円売り介入によりマネタリーベースは増加
  6. マネーサプライM
    • = 現金C + 預金D
    • = (C + D) / (C + R) x (C + R)
    • = (C / D + 1) / (C / D + R / D) x H
    • 中央銀行は直接コントロールできない(ハイパワードマネー経由での操作になる)
  7. 現金預金比率
    • = 現金C / 預金D
  8. 貨幣乗数(信用乗数)
    • ハイパワードマネーのコントロールを通じてマネーサプライを変化させる係数のこと
    • 通常は1より大きく、理論上はコントロール可能(だが、現実には色々ある)
    • マネーストック / マネタリーベース
  9. 基準割引率および基準貸付率
    • 日本銀行が市中銀行に貸し出しを行う時の基準金利のこと(1994年の金利自由化迄は公定歩合)
  10. 公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)
    • 日本銀行が金融市場において、国債や手形などの有価証券を売買すること
    1. 売りオペレーション
      • 日本銀行が国債や手形を民間金融機関に売却して、市場の余剰資金を吸収する → ハイパワード・マネーの減少 → 貨幣供給の減少
    2. 買いオペレーション
      • 日本銀行が国債や手形を民間金融機関から購入して、市場に資金を供給する → ハイパワード・マネーの増加 → 貨幣供給の増加

貨幣市場均衡

  1. 貨幣供給曲線
    • 利子率には依存せず、マネーサプライMの水準になる(グラフでは垂直な直線)
  2. 利子率
    • 貨幣の値段と考える
    1. 均衡点より高い場合
      • 貨幣より債券を持つ為、貨幣需要より貨幣供給が増えて供給超過になり、利子率は低下
    2. 均衡点より低い場合
      • 債券より貨幣を持つ為、貨幣供給より貨幣需要が増えて需要超過になり、利子率は上昇

LM曲線

  1. 定義
    • 貨幣市場を均衡させる国民所得と利子率の組み合わせを示す曲線
    • L: Liquidity(流動性選好)、M: Money Supply(貨幣供給)
  2. 形状
    • 縦軸:利子率、横軸:国民所得
    • 右上がりの曲線
    • 導出★
      • 国民所得(GDP)の増加 → 均衡点の上昇 → 均衡利子率の上昇
    • 流動性の罠が発生している場合、水平な直線になる(ある一定の利子率よりも低下しない)
  3. 均衡
    1. 曲線より上の領域
      • 貨幣供給は超過(利子率高 → 需要減 → 供給大 → 利子率低下)
    2. 曲線より下の領域
      • 貨幣需要は超過(利子率低 → 需要増 → 利子率増加)
  4. 曲線の傾き
    1. 緩やか
  5. シフト
    1. 貨幣供給が増加する場合
      • 貨幣供給曲線は右にシフト → 利子率低下★ → 国民所得増加 → LM 曲線は右(下方)にシフト
    2. 貨幣供給が減少する場合
      • 貨幣供給曲線は左にシフト → 利子率上昇★ → 国民所得減少 → LM 曲線は左(上方)にシフト

投資関数

  1. 投資の限界効率
    • 企業が新たな投資を行う際に、追加的に得られる利益のこと
  2. 投資の限界効率理論(ケインズ)
    • 投資の限界効率が利子率を上回る際に投資が行われる
    • 結果的に、利子率が上昇するほど投資額は小さくなる(投資は利子率の減少関数
  3. 投資関数
    • 縦軸:利子率、横軸:投資
    • 形状:右下がりの直線
  4. 投資の利子率弾力性(利子感応度)
    • 利子率が1%変化した時、投資が何%変化するかを示す指標のこと
    1. 大きい場合
      • 利子率の変化に対し投資が敏感に反応する(少しでも利子率が低下すると大きく投資が増える)為、投資関数を表す投資曲線の傾きは緩やか
    2. 小さい場合
      • 利子率の変化に対し投資が敏感に反応しない(利子率が低下させても投資が増えない)ため、投資関数を表す投資曲線の傾きは急

IS曲線

  1. 定義
    • 財市場を均衡させる利子率と国民所得の組み合わせを示す曲線
    • I: Investment(投資)、S: Saving(貯蓄)
  2. 形状
    • 縦軸:利子率、横軸:国民所得
    • 右下がりの曲線
  3. 意味
    • 利子率低下 → 投資の増加 → (乗数効果) → 均衡国民所得の増加
  4. 領域
    1. IS曲線より右上の領域
      • 財市場が供給超過 → 生産減少 → 国民所得の低下(水平左方向へ移動)
    2. IS曲線より左下の領域
      • 財市場が需要超過 → 生産増加 → 国民所得の増加(水平右方向へ移動)
  5. 曲線の傾き
    1. 緩やか
  6. シフト
    1. 需要項目(消費、民間投資、政府支出、輸出)の増加・減税
    2. 需要項目(消費、民間投資、政府支出、輸出)の減少・増税
      • 左へシフト
  7. 参考

IS-LM分析

  1. 定義
  2. 均衡点
    • IS曲線とLM曲線の交点
    • ただし労働市場の均衡は別物
  3. 関連
  4. 参考

財政政策

  1. 施策
    • 政府支出の増加、減税 → 均衡点は右へシフト → 国民所得が増加(利子率も上昇)
  2. 結果
    • 乗数効果ほどには国民所得は増加しない(乗数効果では利子率一定という前提だったので、今回の想定とは異なる)
    • 利子率上昇(副作用)
  3. クラウディングアウト
    • 乗数効果で一旦増えた国民所得では、貨幣市場は均衡しない状況
    • 貨幣供給は一定だが、貨幣需要が増加する為、需要超過 → 利子率が上昇 → 民間投資が低下すること
    • 但し、流動性の罠が生じている場合、利子率は一定のまま上昇しない → 民間の投資が減少しない → クラウディングアウトは発生しない
  4. クラウディングアウト効果
    • クラウディングアウトの結果、国民所得が減少すること
  5. 効果
    • 貨幣需要の利子率弾力性が大きい、所得弾力性が小さい → LM曲線の傾きが緩やか → クラウディングアウトが小さい → 財政政策の効果大
    • 流動性の罠が発生 → LM曲線は水平 → 財政政策の効果は非常に大きい

金融政策

  1. 施策
    • 中央銀行がマネーサプライをコントロールして国民所得を調整すること
  2. 結果
    • 利子率低下(金融政策を実行 → LM曲線は右にシフト → 均衡点の国民所得は増加 → 利子率は低下)
    • 財政政策のクラウディングアウトは発生しない
  3. 効果
    • 投資の利子率弾力性が大きい、限界消費性向が大きい → IS曲線の傾きが緩やか → 利子率の低下に対する投資の増加が大きい → 金融政策の効果大
    • 貨幣需要の利子感応度が小さい → 需給を均衡させるためには大幅に利子率を低下させる必要あり → 利子率が大幅に低下 → 投資の増加も大 → 金融政策の効果大
    • 流動性の罠が発生 → LM曲線は右へシフト → 国民所得は増加しない(金融政策の効果は無く、財政政策の方が有効)
  4. 拡張的な金融政策(金融緩和政策)
    • マネーサプライを増加させる政策(買いオペレーション、法定準備率の低下)
    • 結果:LM曲線は右方にシフト
  5. 緊縮的な金融政策(金融引締政策)
    • マネーサプライを減少させる政策(売りオペレーション、法定準備率の上昇)
    • 結果:LM曲線は左方にシフト
  6. 裁定行動
    • 金融市場における金利調整

その他

  1. 資産効果
    • 保有資産の価値の大きさが消費に与える効果のこと
    • 所得が不変でも、保有資産残高が増えると豊かになったと感じて消費を増やす
    • IS曲線を右にシフトさせる
    • 例:公債資産が増加 → 消費が喚起されることでさらにIS曲線は右シフト → 資産に占める債券の比率が高まるため、安全資産の貨幣と危険資産の公債の保有割合を元に戻そうと貨幣需要が拡大 → LM曲線は左にシフトする
      • 結果的に、GDPが上昇するか否かは、IS曲線の右シフト幅とLM曲線の左シフト幅に依存する
  2. 中央銀行の買いオペ
    • 日銀が市場から債券を買い、資金を市場に供給すること

目次

関連

用語集


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