Tag: 経済学・経済政策 労働市場と主要理論

情報

インフレーション

  1. インフレーション
    • 物価が持続的に上昇すること
    • 貨幣価値の下落を意味する
  2. ディマンドプル・インフレーション(需要インフレーション)
    • 景気の過熱が原因となり、総需要が総供給を超えることによって生じるインフレのこと
    • 発生原因は需要サイド
    • 総需要曲線が右にシフトすることで発生する
  3. コストプッシュ・インフレーション(コスト・インフレーション)
    • 賃金や原材料費などの高騰が原因となり、生産費用(賃金、原材料、燃料費など)が上昇することによって生じるインフレのこと
    • 発生原因は供給サイド
  4. ディスインフレーション
    • インフレーションは抜けたが、まだデフレーションにはなっていない状態
  5. ディスインフレーション政策
    • ディスインフレーションを目指して実施する政策(通貨の供給を抑えて物価の安定を図る)

デフレーション

  1. 実質利子率の上昇
    • フィッシャー方程式
      • 実質利子率 = 名目利子率 - インフレ率
  2. 貨幣の実質価値の上昇
    • 資産価値の低下
  3. 債務者から債権者への所得再分配
    • 実質利子率の上昇により債権の価値が高まる
    • (実質利子率の上昇により、債務者にとっては債務の実質的な負担が増大する為、債権者にとっては債権の実質的な価値が高まる)
    • (物価下落 → 保有資産の実質価値が増加 → 消費増加)
  4. デフレ・スパイラル
    • 消費者は消費を控えて貨幣を保有する
  5. 実質賃金の上昇
    • 「実質賃金 = 名目賃金 / 物価」より算出される為
    • 名目賃金が財・サービスの価格よりも下方硬直的である場合、実質賃金は高止まりになる(高値のまま下がらない)
  6. リフレーション
    • デフレーションは抜けたが、まだインフレーションにはなっていない状態
  7. リフレーション政策
    • リフレーションを目指して実施する政策(金融緩和による需要拡大)

需給ギャップ

  1. 需給ギャップ
    • = 実際のGDP - 潜在GDP
    • = (実際のGDP - 潜在GDP)/ 潜在GDP
  2. 潜在GDP
    • 一国の生産要素をフル活用した場合に実現する生産量(潜在供給能力)
  3. インフレギャップ
    • 実際のGDP(総需要) > 潜在GDP(潜在総供給力)
  4. デフレギャップ
    • 実際のGDP(総需要) < 潜在GDP(潜在総供給力)
  5. オークンの法則
    • 失業率と実質GDP成長率における負の相関を示したもの(実質GDPが成長すると、失業率が低下する)

労働市場

  1. 名目賃金
    • 労働者の賃金w
  2. 実質賃金
    • 労働者の賃金(名目賃金w / 物価P)
    • 意味:商品をどれだけ購入できるか?
  3. 労働需要
    • 実質賃金の減少関数
      • 実質賃金が上がる → 労働需要は減少する(高い賃金なら要らない)
      • 実質賃金が下がる → 労働需要は増加する(低い賃金なら雇用したい)
    • 古典派もケインズ派も同じ
  4. 労働需要曲線
    • 縦軸:実質賃金、横軸:労働量、形状、右下がり
    • デフレ発生時:曲線はシフトしない、均衡点は上昇する(P↓ → w/P↑に変化する為)
  5. 古典派の第一公準
    • ケインズが「雇用・利子および貨幣の一般理論」という書籍において示した命題(ケインズ経済学では認める)
    • 企業は、労働の限界生産力が実質賃金率に等しくなるように労働を需要する
    • 企業の利潤が極大化されるとき、実質賃金は労働の限界生産物に等しい(→ 労働の限界生産物が実質賃金に等しくなるように労働量を決定する → 企業が希望する労働力が決まる)
  6. 労働供給
    • 古典派とケインズ派では異なる
    1. 古典派
      • 実質賃金の増加関数
      • 実質賃金が上がる → 労働供給は増加する(高い賃金なら働きたい)
      • 実質賃金が下がる → 労働供給は減少する(安い賃金なら働きたくない)
    2. ケインズ派
      • 仮定:労働共有は名目賃金に依存する(物価Pが分からない → 実質賃金も分からない<貨幣錯覚>)
      • 仮定:名目賃金の下方硬直性(賃金wは下がりにくい)
  7. 労働供給曲線
    1. 古典派
      • 縦軸:実質賃金、横軸:労働量、形状:右上がり
    2. ケインズ派
      • 縦軸:名目賃金、横軸:労働量、形状:水平直線(名目賃金の下方硬直性)+ 右上がり直線
      • 物価Pが変化してもシフトしない
  8. 古典派の第二公準
    • 労働者は、労働の限界不効用が実質賃金率に等しくなるよう労働力を供給する(労働者は、実質賃金率の水準に応じて労働供給量を決定する)
    • ケインズ経済学では認めない(完全雇用が達成されるまでは名目賃金率の関数)
  9. 効率賃金仮説
    • 効率を重視して賃金は決められるという考え方
    • 均衡賃金よりも企業が実際に支払う賃金は高い
    • メリット
      1. 離職率が減る
      2. 労働者の質が高くなる
      3. 労働者の労働意欲が高まる
  10. 自然失業率
    • 完全雇用が達成されてもなお存在する失業率のこと
    • 労働市場が均衡しているときの失業率のこと

総供給曲線(AS曲線)

  1. 総供給曲線(AS曲線:Aggregate Supply Curve)
    • 労働市場を均衡させる物価水準と国民所得の関係を表す曲線
    • 縦軸:物価水準P、横軸:国民所得P、グラフ:右下がり
    1. 古典派
      • 物価水準に依存せず、完全雇用の際の国民所得で垂直な直線
      • 物価が変わっても、国民所得は変わらないので垂直直線(下記の「導出」動画にて6:30辺り)
    2. ケインズ経済学
      • 物価が低いときは右上がり、完全雇用を達成した後は横軸に対して垂直な直線(下記の「導出」動画にて7:55辺り)
  2. 古典派
    • 総供給曲線が横軸に対して垂直な為、均衡国民所得は総供給曲線の水準で決定される
    • → 国民所得は、総需要には全く依存せず、総供給によって決まる
    • → 供給によって需要が生み出される(セイの法則
  3. 右シフト
    1. 賃金w低下(生産コスト低減)
      • (前提:物価Pは一定)労働市場にて賃金w↓ → 労働力N↑ → (生産関数にて)国民所得Y↑ → (物価Pは一定なので)AS曲線は右シフト (下記の「導出」動画にて14:00辺り)
    2. 生産性向上
      • 参考:経済学用語集「古典派の第一公準」はじめよう経済学 - YouTube
      • 生産関数:縦軸:生産量Y、横軸:労働力N、グラフ:Y=√N
      • (労働力N一定にて)生産関数の上昇 → 接線の傾き大 → 労働の限界生産力上昇 → AS曲線が右シフト(27分からの説明)
      • 労働の限界生産力:縦軸:労働の限界生産力MP、横軸:労働力N、グラフ:右下がりの曲線(生産関数の接線の傾き)→限界生産力逓減の法則(前提:資本Kが一定の条件)、MP = dY/dN = 1 / 2√N
      • 利潤最大化の条件:微分 = 0
      • 技術革新(物価Pは一定) → 労働力N↑ → 技術革新で上昇した生産関数上における生産量Y↑ → (物価Pは一定なので)AS曲線は右シフト(31分からの説明)
      • 関連:古典派の第一公準
  4. 労働市場
    1. ケインズ経済学
      • 物価水準P↑ → 実質賃金w↓ → (完全雇用の状態に近づく) → 非自発的失業↓ → 労働需要↑
  5. 導出

総需要曲線(AD曲線)

  1. 総需要曲線(AD曲線:Aggregate Demand Curve)
    • 財市場と貨幣市場を同時に均衡させる国民所得と物価水準の組み合わせを表す曲線
    • 縦軸:物価水準、横軸:国民所得、形状:右下がり(物価が下がればたくさん買う)
    • グラフ:均衡国民所得は、物価の減少関数(物価が上昇する → 均衡国民所得が減少する)
    • 経済が「流動性の罠」の状態では、総需要曲線は垂直になる(利子率は低下しない(出来ない) → 投資が増加しない → 国民所得も増加しない)
  2. 導出
    • IS-LM分析におけるLM曲線のシフト(均衡国民所得は物価の減少関数という関係より)
    • 参考:はじめよう経済学+(Plus)「第7講 AD-AS分析(2)」1 AD曲線の導出 - YouTube
      • コメント:(5分辺り)貨幣市場(縦軸:利子率、横軸:貨幣需要L、貨幣供給M)と、IS-LM曲線の両グラフの左右比較より算出
      • 物価P↓ → 貨幣供給M/P↑(右シフト) → LM曲線は右シフト → 国民所得↑(この時点では均衡利子率は低下していない)
      • その一方で国民所得↑ → 取引的動機に基づく貨幣需要L↑ → 貨幣需要Lは右シフト → 利子率↓ → 結果的に両グラフで均衡利子率は一致する
      • 結果的に物価P↓ → 国民所得↑の関係が導き出される(この関係がAD曲線)

AD-AS分析

  1. 総需要・総供給分析(AD-AS分析)
  2. 情報
国民所得Y利子率r物価P
45度線分析変化固定固定
IS-LM分析変化変化固定
AD-AS分析変化変化変化

国際貿易

  1. 購買力平価説
  2. 金利平価説
    • 為替レートは、自国通貨と外国通貨の金利の差によって決定される
    • 例:日本の利子率の上昇は、外国通貨を売って日本円を買う資金移動が生じるため、円高要因となる
  3. 貯蓄投資バランス(ISバランス)
    • 純輸出の決定を表す理論
    • 純輸出X = 貯蓄超過 + 財政黒字
      • 貯蓄超過 = 貯蓄S - 投資I
      • 財政黒字 = 税金T - 政府支出G
    • 経常収支 = 純貯蓄 + 財政収支
    • 例:日本の経常黒字:貯蓄超過額が財政赤字額を上回る為
    • 例:米国の経常赤字:純貯蓄が不足し、財政赤字が経常赤字に結び付く為
  4. Jカーブ効果
    1. 為替レートが上昇(低下)し、円が減価(増価)し円安(円高)になる
    2. → 価格は素早く反応するのに対して輸出入数量が変化するまでには時間がかかり数量調節が遅れる
    3. → 一時的に貿易収支(経常収支)が悪化(改善)し、時間の経過とともにマーシャル・ラーナーの条件が満たされる
    4. → 貿易収支(経常収支)が改善(悪化)すること
  5. 完全資本移動
    • 内外資産は完全に代替的であり、資本移動は完全に自由であること
  6. 不完全資本移動
    • 「完全資本移動」ではなく「資本移動がゼロ」でもないこと
  7. 固定相場
    • 中央銀行が通貨交換を行う為、マネーサプライを自由にコントロール出来ない
  8. 変動相場
    • 中央銀行が通貨交換を行わない為、マネーサプライを自由にコントロール出来る

マンデルフレミングモデル(IS-LM-BP分析)

  1. マンデルフレミングモデル(IS-LM-BP分析)
    • IS-LM分析を開放経済(海外との貿易)に拡張したもの
    • 自国の利子率は世界利子率に一致するように調整される
    1. 固定為替相場制
      • 財政政策:有効(IS曲線が右シフトし、その利子率上昇を低下させる為にLM曲線が右シフトする為、結果的に国民所得は増加)
      • 金融政策:無効(LM曲線が右シフトするが、その利子率低下を上昇させる為にLM曲線が左シフトする為、プラスマイナスゼロ)
    2. 変動為替相場制
      • 財政政策:無効(IS曲線が右シフト → GDP増加 → 金利も上昇 → 自国通貨も上昇 → 輸出競争力低下 → 純輸出低下 → IS曲線が左シフト → GDP増加の効果を打ち消す → 結果的にプラスマイナスゼロ)
      • 金融政策:有効(LM曲線が右シフト → 均衡点は右に移動 → 自国利子率が世界利子率よりも低い → 海外への投資増加 → 外貨の需要が増加 → 自国通貨安・外国通貨高 → 自国の純輸出が増加 → IS曲線が右方にシフト → 均衡点は更に右へ移動 → 結果的に政策の効果有り)
  2. BP曲線
    • 国際収支を均衡させる国民所得Yと利子率rの組み合わせを表す軌跡のこと(横軸:国民所得、縦軸:利子率)
    • 完全資本移動の場合
      • 国内利子率は海外利子率に等しくなるように調整されるので、横軸に対して水平(利子率に依存しない)
    • 不完全資本移動の場合
      • 右上がり曲線
    • 資本移動がゼロの場合
      • 横軸に対して垂直
    • 国際収支は、BP曲線の上方では黒字、下方では赤字
  3. 不胎化政策
    • 政府が国内に流通しているマネーサプライを一定にすること
    • 中央銀行が自国通貨で外国通貨を購入する → 外国通貨が市場から吸収され自国通貨が市場に供給される → マネーサプライが増加するという状況に対処する為の措置

消費理論

  1. ケインズの消費関数理論(絶対所得仮説)
    • 消費は所得の絶対水準に依存し、所得が上昇すれば平均消費性向は低下するという考え方
    • C = cY + c0 より平均消費性向 C/Y = c + c0/Y
  2. ライフサイクル仮説
    • 消費は生涯所得に依存するという考え方(F.モジリアーニ、R.ブランバーグ、A.K.安藤)
    • 例;定年までは消費を増やし、定年後は消費を減らすが、貯蓄により消費を平準化する
  3. 恒常所得仮説
    • 変動所得は当てにできない為、消費は恒常所得に依存するという考え方(M.フリードマン)
    • 1回の減税によって変動所得が増加しても消費は一定であると考える
    1. 恒常所得
      • 毎期に平均的に得られる所得(例:給与所得)
    2. 変動所得
      • 一時要因で変動する所得(例:賞与)
  4. 時間的相対所得仮説
    • 消費水準を決定するのは、現在及び過去の所得のうちの最高所得水準であるという考え方(J.S.デューゼンベリー)
  5. 倹約のパラドクス
    • 個人が倹約することは美徳であるが、経済全体にとっては好ましくない結果をもたらすという理論
  6. 消費の習慣仮説
    • 消費は過去の所得水準や、消費習慣に影響を受けるとする考え方
  7. ラチェット効果(歯止め効果)
    • 過去に大きな所得を得ていた人が、所得が下がった場合でも消費を下げずに維持すること
  8. リカード・バローの等価定理
    • 貯蓄(遺産)を考慮すると、公債発行と増税の経済効果が等しくなること

投資理論

  1. 資本ストック
    • 企業の設備の水準のこと。生産量を増やすために必要
  2. 資本係数
    • 資本ストック = 資本係数 x 生産量
  3. 加速度原理
    • 投資は国民所得の変化分に比例して変動するという考え方
      • ⊿資本ストック = 資本係数 x ⊿生産量
      • ⊿資本ストック → 投資額なので下記が成り立つ
      • 投資額 = 資本係数 x 国民所得増加額
    • 資本係数は一定という仮定
  4. ケインズの投資理論
    • 利子率が低下すると投資を増加させる
  5. ケインズの投資の限界効率理論
    • 投資の限界効率と利子率が等しくなる水準まで投資は行われる
  6. 資本ストック調整原理
    • 今期の望ましい資本ストック水準と、前期末の資本ストックとの間の一定割合だけ投資が実現されるという考え方
    • 今期の投資支出 = 伸縮的加速子 x(最適資本ストック - 前期の資本ストック)
  7. トービンのq理論
    • 企業の市場価値と現在の資本ストックとの比較によって投資が判断されるという考え方
    • トービンのq = 企業の市場価値 / 資本の再取得価格
      • 企業の市場価値:将来の期待される収益性を反映
      • 資本の再取得価格:企業が保有する資本ストックを全て買い換えた場合の費用総額
    1. トービンのq > 1の場合、企業は投資案を採択する
    2. トービンのq < 1の場合、企業は投資案を採択しない
  8. 関連

貨幣理論

  1. 貨幣数量説
    • マネーサプライの増加は物価水準を変化させるだけで実物経済には影響を与えないとする考え方
    • マネタリズム(マクロ経済学の学派)による提唱
    • 利子率の影響は含まれていない(ケインズ型の貨幣需要関数との違い)
    • 貨幣の流通速度
      • = 名目国民所得 / 貨幣量
      • = (実質国民所得 x 物価水準)/ 貨幣量
    • フィッシャーの交換方程式
      • 貨幣量 x 貨幣の流通速度 = 実質国民所得 x 物価水準
      • 貨幣量 = (1 / 貨幣の流通速度)x 実質国民所得 x 物価水準
      • マーシャルのk = 1 / 貨幣の流通速度
    • 貨幣の中立性が成り立つ場合、名目貨幣供給がn倍になれば物価水準もn倍になる(上記の式より)
  2. 貨幣の中立性(貨幣の二分法、貨幣のヴェール観)
    • 経済の実物部門と貨幣部門とは2つに区分されており、貨幣は実物経済に何ら影響を及ぼさず中立であるという考え方

その他

  1. フィリップス曲線
    • 名目賃金上昇率(又は物価上昇率)と失業率の関係を表した曲線のこと
      • 物価上昇率が高い時、失業率は低下
      • 失業率が高い時、物価上昇率は低下
    • グラフ:右下がり(トレードオフの関係、逆相関関係)
  2. 自然失業率仮説
    • 短期:企業は現実の正しい物価上昇率を知ることができるのに対し、労働者は現実の正しい物価上昇率を知ることができない。(貨幣錯覚)
    • 長期:貨幣錯覚が解消され、期待物価上昇率と現実の物価上昇率が一致する為、現実の失業は完全雇用に対応する自然失業率に等しくなる。
  3. 物価の硬直性
    • 物価は一定であり、物価水準は時間を通じて変動しないこと
  4. 小国モデル
    • 自国の経済変数が海外の経済変数に影響を与えないほど自国経済規模が世界経済に対して十分に小さいと仮定したモデルのこと
  5. 静学的な為替レート予想
    • 将来の為替レートは現在と変わらないと予測すること(静学的期待)

目次

関連

用語集


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